jomon-venus’s diary

書き溜めてたやつを解放するブログ

パスタを食べる

一人分の乾麺がボウルの水を吸いきって、ボウルの金属までも吸い取り始めたちょうどその頃。

 

 

人差し指の先端から第二関節くらいの大きさの銀の円盤が窓にコンと当たって、真下のお堀に落ちた。ポチャという音とともに拡がった同心円に驚いたアメリカザリガニは蓮の葉の裏に隠れた。

 

しばらく経てば、驚きも平常心へと戻り、つまらなさそうに蓮の茎を切り取っていく。根と切り離された蓮の葉はゆらっと漂って、でもどこへ行くというのでもない。ひっくり返って光を反射して浮いていた円盤を鯉が食べた。鯉の胃の中で円盤は別にどうというわけでもなく、順当に消化されていくのだろう。

 

 

そんなことを思いながら、ぶよぶよに伸びた麺を私は左手で鷲掴みにして食べた。

右手にボウルを持ち、開いた所々の穴から松林を眺めれば、ボウルの内部に緑が万華鏡の如く反射する。それと同時に、胃袋が蠕動運動してふやけた小麦粉と金属とを分離した。小麦粉はやがて十二指腸に送り込まれ、金属もまたどうというわけでもなく、消化されていくのだろう。

 

 

 

おしまい。